第2回:コンピューターの歴史を築き、動かした Windows 95 のリリース

対象プロダクト:Windows 95

Windows 95 の概要

デスクトップ画面

1995年11月23日(勤労感謝の日)に満を持して Windows 95 日本語版がリリースされました。
東京の秋葉原では深夜0時に販売が開始され、多くの人で賑わいました。

Windows 95 のシステム要件とパッケージ

Windows 95 日本語版では、Windows 95 の為に以下のシステム要件が必要となります。

Windows 95 のインストールのシステム要件

プロセッサ(CPU)486SX 以上
RAM8 MB 以上 (12 MB 以上を推奨)
ハード ディスクの空き領域75 MB 以上
リムーバブルディスク1 つ以上の 3.5 インチ高密度フロッピー ディスク ドライブ
グラフィック カードVGA 以上の解像度 (256 色の SVGA 推奨)

省略可能なコンポーネント

  • Microsoft マウスまたは互換性のあるポインティング デバイス
  • モデムまたは Fax/モデム
  • オーディオ カードとサウンドスピーカー
上記のとおり、インストールに必要な CPU は 486SX 以上と英語版に比べて要件が引き上げられています。※英語版は 386DX 以上
また、Windows 95 は NEC PC9800 シリーズ版や、FDD 版があり、パッケージの種類は当時としては多めでした。
この NEC PC9800 シリーズ版のサポートは Windows 98 まで続きますが、FDD 版は Windows 95 まででした。
FDD 版は CD-ROM を搭載できない、限られた環境(主にノートパソコン)用のパッケージと言ってもいいですが、そもそもそのような旧式のノートパソコンは Windows 95 を使用する事自体が快適ではなく、あまり現実的なパッケージではありません。
但し、当時のマシンは CD ブートはおろか、FDD 起動で CD-ROM を認識させるのにも、必要なドライバ類を組み込み、config.sys や autoexec.bat を編集せねばならず、FDD 版はそれらの作業が必要ないというメリットはありました。

また、当時の Windows 95 プリインストールの CD-ROM 未搭載のノートパソコンでは、購入後に FDD への再セットアップ用ディスクの作成が必要なものもありました。
これを怠ると、OS が破壊された時、再セットアップができなくなります。
そのような場合は FDD 版を購入するか、メーカーに修理に出す必要がありました。(メーカーで HDD のイメージを復元して返してくれました)
また、PC-9800 シリーズのマシンは初回起動時に Windows 3.1 か Windows 95 かを選択する仕組みのものもあり、選択しなかった方の OS は完全に削除されました。
選択を誤ると希望しない OS のライセンスが与えられることになります。

Windows 95 の主な新機能

  • MS-DOS や以前の Windows との完全互換
  • GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)(スタートボタン、デスクトップなど)
  • プラグアンドプレイ
  • 32 bit のプロテクトモードサブシステム
  • プリエンプティブなマルチタスクとマルチスレッド
  • ネットワーク機能の強化(マイネットワークなど)
  • モバイル環境の強化(ブリーフケースなど)
Windows 95 で Microsoft が最も力を入れたのが、皮肉にも MS-DOS や以前の Windows との完全互換です。
これは真の 32bit OS である Windows NT があまり売れなかったという点の反省でもありました。
つまり安定性よりも互換性を重視した OS という事になります。
GUI の面では、大幅なアップデートが行われており、Windows 3.1 のようなプログラムマネージャが画面に表示され、どこから初めて良いのか分からないような構成ではなく、デスクトップに見立てたその名も「デスクトップ」という独立したディレクトリが作られ、そこにマイコンピュータやゴミ箱、ショートカットアイコンが配置されました。
また、画面下にはタスクバーが備えられ、スタートボタンが置かれました。
これにより、まさに OS を開始するためのボタンが誰が見ても分かるように構成されたのです。

更に、ハードウェアや設定ファイルでのドライバの設定を容易に行えるように、接続した機器を自動で検出できるプラグアンドプレイにも対応しました。
リアルモードのドライバは config.sys などでの設定の記述が必要でしたが、Windows のドライバの設定は基本的にレジストリに保存されます。

そして、Windows 95 の最も革新的な部分は 32bit プロテクトモードの実装による、プリエンプティブなマルチタスク、マルチスレッドです。
ユーザーモードで実行されるプログラムには個々のメモリ空間が与えられ、プログラムはそのメモリ空間内のみで動作します。
他のプロセスのメモリ空間にアクセスしたり、カーネルモード側のメモリを直接操作することはできなくなりました。
これにより OS の堅牢性は大幅に向上しました。

更にマルチスレッド化により、システムにより効率よく各スレッドにタイムスライスが与えられる事により、同時に複数のプログラムを快適に実行できるようになりました。

またネットワーク機能についても、インターネットに接続するためのすべての機能(TCP/IPプロトコル、ダイヤルアップ機能)が用意され、当時ブームを起こしつつあったインターネットの利用を手助けしました。
また、容易にピアツーピアのネットワークを構築することができ、他のパソコンとのネットワークリソースの共有も容易になりました。
重要なのはこれらの機能が追加のソフトウェアを購入することなく、Windows 95 に標準搭載された点です。

更に Microsoft はモバイルコンピューティングも強化し、その1つとして「ブリーフケース」機能を搭載しました。
これは、同期が必要なファイルをブリーフケースに格納しておき、そのファイルを他の環境で編集した場合に、ファイルを同期させるという仕組みでした。

Windows 95 の欠点

上述したように Windows 95 では、プリエンプティブではない過去の OS との互換性を最も重要視したため、Kernel 以外(User、GDI)はその多くに 16bit コードが使用されていました。
そのため、16bit 用の限られたリソースを使用し、しばしばリソース不足による予期しない OS の動作不安定、ハングアップを引き起こしていました。
また、行儀の悪い 16bit ドライバにより、システムのメモリ領域が破壊され、OS のクラッシュを引き起こすこともあります。
なお、すべての 16bit アプリケーションは 1 つのプロテクトモード内で実行されるため、仮に 16bit アプリケーションが不正処理を行ったとしても、破壊されるのは 16bit の仮想環境内の領域のみであり、OS 自体がクラッシュすることがないように設計されています。

Windows 95 が与えた影響

Windows 95 は世界中のコンピューティングに正に革命を引き起こしました。
Windows 95 の登場とそれを基にした Microsoft の戦略により、それまでの既存の価値観、技術が刷新され、パソコンや周辺機器の低価格化、高性能化が加速したと言えます。
たとえば大きなリソースを必要とする Windows 95 の普及と共に、パソコン本体や CPU、メモリ、ハードディスク等の需要が大幅に増加し、大きな価格変動をもたらしました。
Windows 95 のリリース間もない頃は増設のために 4MB のメモリを2枚購入すると、それだけで数万円していました。
※当時のメモリは SIMM (Single In-line Memory Module) が主流で CPU が Pentium の場合、2枚1組での増設が必要でした。8MB搭載マシンであれば、4MBx2 で 16MB に増設していました。

Windows 95 のリリース時には、メモリ容量が 16MB あれば、何とか使用することはできましたが、この後登場する OS とシェル統合した Internet Explorer 4.0 のインストールにより更に多くのメモリが必要になります。

Microsoft Plus! for Windows 95

別売りの Microsoft Plus! for Windows 95 では以下の機能、アプリケーションが追加されます。

  • Microsoft Internet Explorer 1.0
    インターネット上のHTMLページの閲覧用ソフトウェア(Webブラウザ)
  • デスクトップテーマ
    テーマごとに壁紙、アイコン、スクリーンセーバー、サウンド、マウスポインタを一括で変更するツール
  • ドライブスペース3
    ドライブの圧縮ツールのバージョンアップ版
  • システムエージェント
    任意のアプリケーションの実行をスケジューリングする機能を提供
  • Windows 3Dピンボール
    ピンボールゲーム

Microsoft Plus! for Windows 95 のパッケージの中身

Microsoft Plus! for Windows 95 のパッケージの表は、おなじみの空と雲の絵に、PLUS! のロゴが大きく描かれ、右下に窓から光が漏れている Windows のロゴが描かれています。

Plus! for Windows 95 のパッケージ表

箱の中身は、インストール CD-ROM と、「ファースト ステップ ガイド」、「お使いになる前に」などの冊子が入っています。
ちなみにファースト ステップ ガイドの表紙は白黒となっており、少し安っぽい感じを受けます。

Plus! for Windows 95 のパッケージの中身

パッケージの裏は、いつも通り、商品の紹介が載っています。

Plus! for Windows 95 のパッケージ裏

公開日時:2012年01月29日 11:50:05

おすすめの書籍!
Windowsに詳しくなりたい方はマイクロソフト公式解説書である「インサイドWindows 第7版」がお勧めです。Windowsのアーキテクチャや内部構造の仕組み、背後で動作するコアコンポーネント等について詳細に解説されています。「Windows Internals, Seventh Edition」の日本語訳版です。

なお、Windows Server VPS選びで迷ったらこちらの記事で主要VPSのメモリ容量ごとの月額、年額料金、リモートデスクトップ(RDS SAL)、Microsoft Office SAL料金を比較していますので、是非参考にしてみてください。

Windowsの歴史の記事一覧に戻る

「Windows 95」に関する他の歴史記事

このページのトップに戻る