第7回:NT 系の堅牢性を世に知らしめた Windows 2000 Professional の登場
対象プロダクト:Windows 2000
Windows 2000 Professional の概要
2000年2月18日に Windows NT 4.0 Workstation の後継 OS である Windows 2000 Professional がリリースされました。
Windows 2000 Professional では PC/AT互換機(DOS/V機)および NEC PC-9800 シリーズ用の両方のプラットフォーム版がリリースされましたが、NEC PC-9800 シリーズについては、この Windows 2000 Professional が最後の Windows となりました。
Windows 2000 Professional は完全 32bit OS の Windows NT 系の特徴であるプリエンプティブで、ユーザーモードにおけるメモリ空間の保護が保証された堅牢なシステムアーキテクチャの上に構築され、更に Windows 98 のユーザビリティ、プラグアンドプレイ、Direct3D、USB、ACPI 機能等を初めて NT 系に実装した画期的な OS と言えます。
まずは、システム要件を見てみましょう。
Windows 2000 Professional のシステム要件
コンピュータ本体 | Pentium 133 MHz 以上のプロセッサあるいは互換性のあるマイクロプロセッサ |
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メモリ | 最小 32 MB 以上の RAM(64 MB 以上を推奨、最大 4 GB) |
ハードディスク | 850 MB 以上の空き容量(全体として 2 GB 以上のハードディスクを推奨) |
ディスプレイ | VGA 以上の高解像度ディスプレイ モニタ |
ディスク装置 | CD-ROM ドライブまたは DVD-ROM ドライブ |
その他 | キーボード、マウスまたはその他のポインティング デバイス |
パッケージの中身
パッケージの表は正方形の窓が複数重なるようなデザインになっています。
こちらは2000年9月23日に出た、期間限定 特別アップグレード版になりますが、初期のパッケージの背景は白色と非常にシンプルでした。
デザインについても、コンシューマ向けの Windows 9x と企業向けの Windows NT 系の住み分けがあるのでしょうか。
パッケージの中身は、インストール CD-ROM が、PC/AT互換機用と、PC-9800用の2枚、高度暗号化パック フロッピーディスク、クイック スタート ガイド、ファースト ステップ ガイドと少し豪華です。
また、ファースト ステップ ガイドも結構な厚みがあります。
この辺りもコンシューマ向けとの違いでしょうか。
パッケージの裏は、機能概要の説明の他に、Windows Me との違いについても記載されています。
これはこのパッケージが Windows Me と同時発売された期間限定版のためでしょう。
信頼性の向上
Windows 2000 Professional は Windows NT 4.0 の堅牢性を引き継いだ上で、更に多くの信頼性を向上させる機能が実装されています。
Windowsファイル保護
Windowsファイル保護機能により、システムの重要なファイルが不正に変更されるのを防止できます。
たとえば、System32 フォルダ内の DLL ファイルをリネームしたり、削除した場合、同機能によりキャッシュされている元の DLL ファイルが復元されます。
Windowsインストーラ
Windows インストーラにより、アプリケーションのインストール時の自動修復機能が提供されます。
アプリケーションのインストールや削除により問題が発生した場合、Windows インストーラがそれを修正します。
たとえば、新しくインストールしたアプリケーションに、ほかのアプリケーションの DLL と同じ名前の DLL が含まれていた場合、Windows インストーラはそれらを別のフォルダに保存します。
動的なシステム構成
新しいハードウェアやソフトウェアのインストール時における再起動の回数を減らしています。
例えば、Windows 2000 の認定条件を満たしているプラグアンドプレイに対応するドライバを有する、スキャナや、DVD プレーヤー、スピーカーといったハードウェアデバイスを、再起動なしで追加することができます。
パフォーマンス
Windows 2000 Professional では、4GB までの物理メモリと、2つまでの対称型マルチプロセッシングをサポートしており、Windows NT 4.0 Workstation や Windows 98 よりも優れたパフォーマンスを提供します。
Windows 2000 Professional は完全な 32bit アーキテクチャに完全に基づいているため、ユーザーが同時に実行できるプログラムやタスクの数が増えていますが、メモリや CPU を増設(デュアルCPU、デュアルコア構成等に)することで、パフォーマンスを向上させることができます。
ユーザビリティとメンテナンス性
Windows 2000 Professionalでは、グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)の改善や、ネットワーク接続管理用の新たなインターフェイスを提供しています。
デスクトップインターフェイス
Windows 98 風の GUI に加えて、[スタート] メニューには最も頻繁に利用する項目だけを表示する機能、ダイアログボックス等でユーザーが入力した言葉を補完し、最も頻繁に使用されている項目を表示する機能が実装されています。
- カスタマイズ可能なツールバー
タスクバーやデスクトップ上に、クイック起動バーなどのカスタマイズ可能なツールバーを自由に追加することができます。 - デスクトップの表示ボタン
タスクバーに [デスクトップ表示] ボタンが配置されており、一括ですべてのウインドウを最小化できます。 - マイドキュメントフォルダとマイピクチャフォルダ
ユーザーごとに個人的なファイルやフォルダの保存フォルダとして Windows 9x 系のマイドキュメントフォルダが導入され、更に [マイドキュメント] フォルダ内には、写真や、スキャンした画像、ファックス、ビットマップを保存するための、[マイピクチャ] フォルダが置かれています。 - 多言語サポート
OS の文字コードとしてユニコードを使用した事で、どの言語の Windows 2000 Professional 上でもサポートされているすべての言語で、コンテンツの記述、編集、参照、印刷ができます。 - ユーザー補助ツール
[ユーザー補助の設定] ウィザードを使用して、視覚障害者のために画面の一部を拡大できる [拡大鏡] や、[ナレータ] による、画面の内容の読み上げ機能が提供されます。
また、[スクリーンキーボード] での、マウス等による文字入力を支援します。
ネットワーク
過去のバージョンの Windows (Windows 3.x、Windows 95、Windows 98、Windows NT Workstation 4.0、Windows NT Server 4.0) を含め、UNIX、Novell NetWare、IBMホストシステム、Macintosh といった、サードパーティ環境とも共存することができます。
また、Windows 95、Windows 98、Windows NT Workstation とのピアツーピア接続をサポートする機能が実装されています。
セキュリティ
Windows 2000 Professional では、セキュリティが大幅に強化されています。
Windows NT 系のセキュリティ面での堅牢性に基づいているため、コンピュータや、ネットワーク、イントラネット、インターネット上でのファイルの保存や参照、実行について、個々のファイルごとに詳細なアクセス権を設定する事ができます。
また NTFS ファイルシステムの一部である EFS(Encrypting File System)技術の使用により、コンピュータのハードディスクのデータを暗号化することで保護できます。
モバイルコンピューティング
ACPI
ACPI のサポートを利用することで、例えば休止モードを使用することができるようになりました。
休止モードは、コンピュータの電源を切る際に、アプリケーションを終了せずに、メモリ内のデータをハードディスク上に保存した上で、コンピュータをシャットダウンすることで、コンピュータの起動時に休止状態前の状態で復帰させる事ができます。
※休止モードは、それまではノートパソコンでは一般的にメーカー独自だったハイバネーション機能が Windows 自体に実装されたものになります。
オフラインファイルとフォルダ
オフラインファイル/フォルダ機能により、ドキュメントがネットワーク上に保存されている状態が忠実に再現され、たとえオフラインであっても接続しているかのように作業することができます。
また、コンピュータがネットワークに再接続された場合に、同期マネージャがオフラインのファイルとフォルダを比較して、それらを更新します。
ハードウェアのサポート
USB(Universal Serial Bus)、IrDA(Infrared Data Association)、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1394 がサポートされます。
インターネット環境
ブラウザの統合
Internet Explorer 5 の [検索] バーを使って、Webページや、アドレス、ビジネス関連の情報を検索でき、使用する検索エンジンも選択できるようになっています。
また、[履歴] バーを使用して、Webサイトや、イントラネットサイト、ネットワークやローカルフォルダから、以前ブラウズした情報を見つける事ができます。
インターネット接続の共有
インターネット接続の共有 (ICS) を使用して、インターネットへの1つの接続を、ルーターのようにネットワークアドレスの変換や名前解決を提供し、他の複数のコンピュータに同時に接続を共有させることができます。
ICS では、ダイヤルアップ接続とブロードバンド接続がサポートされており、例えば1台のコンピュータでダイヤルアップでインターネットに接続し、その接続を NIC 経由でローカルネットワーク内のコンピュータに提供できます。
つまりルーター的な機能を提供します。
ゲーム環境
DirectX
DirectX 7.0 が搭載され、Windows NT 系でも Direct3D (ハードウェアT&L) が利用できるようになりました。
それにより、Windows NT の堅牢性を基盤にした、安定したゲーミング環境を提供するプラットフォームとしても大きな魅力をゲームユーザーに与えました。
アーキテクチャの観点から
コアアーキテクチャの面では、Windows NT 4.0 からのカーネル関連の変更および拡張点として、Windows Driver Model (WDM)、プラグアンドプレイ、電源管理、暗号化以外では、Windows Management Instrumentation (WMI)、ジョブオブジェクト、ターミナルサービスがあります。
Windows Management Instrumentation (WMI)
Windows NT 4.0 のイベント監視機能とパフォーマンス監視機能では、アプリケーションが特定のコンポーネントに絞ってパフォーマンス情報を照会する手段がなく、特にネットワークを経由する場合、必要なオブジェクトだけでなく、システムで定義されているすべてのパフォーマンスカウンタが収集されるために、パフォーマンスカウンタ機能の精度がかなり低下する可能性がありました。
更に、拡張性がなく、イベントロギング機能とパフォーマンスデータ収集機能のどちらも、管理 API に必要な双方向の対話が出来ませんでした。
Windows 2000 に実装された Windows Management Instrumentation (WMI) は、任意のコンポーネントで構成されるローカルおよびリモートのシステムを管理する上で、必要な柔軟性と拡張性を兼ね備えた拡張可能エンタープライズデータ収集機能とデータ管理機能の設定を採用したものです。
ジョブオブジェクト
ジョブオブジェクトは名前付け可能、セキュリティ保護可能、共有可能なカーネルオブジェクトであり、1つまたは複数のプロセスを1つのグループとして制御します。
ジョブに対して指定できる CPU 関連、メモリ関連の制御は以下のようなものです。
- アクティブなプロセスの最大数
- ジョブ全体のユーザーモード CPU 時間の制限
- プロセスごとのユーザーモード CPU 時間の制限
- ジョブスケジューリングクラス
- ジョブプロセッサアフィニティ
- ジョブプロセス優先度クラス
- デフォルトのワーキングセットの最小と最大
- プロセスおよびジョブのコミットされた仮想メモリの制限
ターミナルサービス
ターミナルサービスは Windows 2000 Server に実装された機能であり、Windows 2000 Professional には実装されていません。
次期 Windows NT 系 OS である、Windows XP の Professional エディションからクライアント OS にも標準搭載されるようになります。
公開日時:2012年02月12日 12:15:49