第22回:方針を転換しメジャーバージョンアップされた Windows 11
対象プロダクト:Windows 11

Microsoft は日本時間2021年6月25日午前0時に実施した Microsoft Windows Event において、Windows 10 を最後の Windows とし、今後はアップデートのみを提供するとしていたいわゆる Windows as a Service (WaaS) 構想を破棄し、新しいメジャーバージョンである Windows 11 を突然発表しました。
Windows 11 は Windows 10 の環境には無償でアップグレードが提供されます。但し後述する理由により古いPCではアップグレードは非常に困難なものとなっています。
システム要件
システム要件として、まず、TPM 2.0 が最小要件として規定され、Intel CPU では第8世代 Core 以降(AMD は Ryzen 2000 以降)のみをサポートするという、非常に厳しい要件を提示してきました。
システム要件上では、「CPUは1 ギガヘルツ (GHz) 以上で 2 コア以上の64 ビット互換プロセッサ」であり、要求スペックは極めて低いですが、サポートされるのは第8世代以降と、乖離している感があります。
プロセッサ | 1 ギガヘルツ (GHz) 以上で 2 コア以上の64 ビット互換プロセッサまたは System on a Chip (SoC) |
---|---|
メモリ | 4 ギガバイト (GB) |
ストレージ | 64 GB 以上の記憶装置 |
システム | ファームウェア UEFI、セキュア ブート対応 |
TPM | トラステッド プラットフォーム モジュール (TPM) バージョン 2.0 |
グラフィックス カード | DirectX 12 以上 (WDDM 2.0 ドライバー) に対応 |
ディスプレイ | 対角サイズ 9 インチ以上で 8 ビット カラーの高解像度 (720p) ディスプレイ |
インターネット接続と Microsoft アカウント | Windows 11 Home エディションにはインターネット接続と Microsoft アカウントが必要 |
特に移行を困難ならしめているのはTPM 2.0が必須となっている点でしょう。
TPM未対応のメーカー製PCやマザーボードではTPMモジュールを増設するのは現実的に不可能であり、CPU側でのTPM機能(ファームウェアTPM)も実際に利用できるのは第6世代辺り(Intel CPU の場合)からです。
注意Intel 公式サイトではファームウェア TPM 機能である Intel PTT (Platform Trust Technology) の実装は Haswell 世代から記載がありますが、有効化にはチップセット側やBIOS側の対応も必要であり、PTTの有効化可否は、あくまでも使用しているPCやマザーボード側の仕様に依存します。
自作PCではマザーボードおよび付随するCPU等を交換すれば対応はできるものの、ノートPCでは交換はほぼ絶望的であり、買い替えが必要になります。
はっきり言ってシステム要件的には、TPM 2.0以外はUEFIやSecure Bootなども要件としてはありますが、少し古めでも多くのPCが対応できます。つまりTPM 2.0が Windows 11 へのアップグレード可否の鍵となっています。
Note逆説的に言えば、Microsoft にとっては古いPCを切り捨てるという意味ではTPM 2.0は格好の機能でしょう。
エディション
エディションは Home と Pro の2つが用意されており、保護機能では Home は BitLocker によるデバイス暗号化と Windows 情報保護 (WIP)が使用できません。
保護機能
機能 | Windows 11 Home | Windows 11 Pro |
---|---|---|
BitLocker によるデバイス暗号化 | × | 〇 |
デバイスの暗号化 | 〇 | 〇 |
デバイスを探す | 〇 | 〇 |
ファイアウォールとネットワーク保護 | 〇 | 〇 |
インターネット保護 | 〇 | 〇 |
保護者による制限と保護 | 〇 | 〇 |
セキュア ブート | 〇 | 〇 |
Windows Hello | 〇 | 〇 |
Windows 情報保護 (WIP) | × | 〇 |
Windows セキュリティ | 〇 | 〇 |
管理と展開機能
管理と展開に関する機能については、Home には実装されていません。Home は文字通り家庭向けですね。そこはこれまでの位置づけと変わりません。
機能 | Windows 11 Home | Windows 11 Pro |
---|---|---|
割り当てられたアクセス | × | 〇 |
動的プロビジョニング | × | 〇 |
Azure による Enterprise State Roaming | × | 〇 |
グループ ポリシー | × | 〇 |
キオスク モードのセットアップ | × | 〇 |
ビジネス向け Microsoft ストア | × | 〇 |
MDM (Mobile device management) | × | 〇 |
Active Directoryのサポート | × | 〇 |
Azure Active Directory のサポート | × | 〇 |
ビジネス向け Windows Update | × | 〇 |
新機能
では肝心の機能面ではどのような魅力的な機能が追加されているのでしょうか。Windows 11 で追加および刷新された主な機能は以下となります。
ユーザーインターフェイス(UI)
Windows 11 を見たときに最初に気づくのがデザインの変更であり、タスクバーのアイコンがまるでmacOSのドックのように中央に配置されています。それに付随してスタートボタンも中央寄りになり、いつもの左下隅ではないため、最初は戸惑うかもしれません。
Teams統合
Microsoft の会議/チャットアプリである Teams が Windows に統合されています。
但し個人アカウントが前提となり、企業などの組織アカウントを使用する場合はエンドポイント マネージャーなどの MDM ポリシーを使用して Microsoft Teams アプリを展開する必要があります。
スナップ レイアウト/スナップ グループ
スナップ レイアウト、スナップ グループ機能によりウインドウの分割が強化されており、いくつかのレイアウトから分割方法を選択して分割できるようになっています。
スナップグループにレイアウトを追加すれば、毎回同じレイアウトでアプリを起動することができます。複数アプリ、複数ウインドウを並べて作業している方にとっては非常に有用な機能になるでしょう。
ウィジェットの復活
天気、カレンダー、株価、ニュースなどのウィジェットが復活しています。ウィジェットはタスクバーから呼び出せます。 最初にウィジェットが導入されたのは Windows Vista で、次の Windows 7 以降では廃止されていました。
Microsoft Storeアプリの刷新
Microsoft Store の外観が刷新され、より多くのパブリック アプリとリテール アプリが表示されるようになっています。 Amazon Appstore アプリをインストールして、Amazon アカウントでサインインし、アプリを購入することも可能になっています。
Androidアプリの利用
Android 用 Windows サブシステムが実装された事で、Android アプリを Windows アプリのようにインストールして使用できるようになっています。 Android アプリを検索、ダウンロード、インストールするには、上述した Amazon Appstore アプリをインストールしてサインインする必要があります。
Androidスマホ/タブレットユーザーにとってはいつも使っているアプリが Windows でも使用できるためアプリの利便性が向上するでしょう。
PCのパフォーマンス向上
機能面以外ではOSの起動速度やSSDの読み書き速度が向上しています。
実際に CrystalDiskMark や 3DMark などのベンチマークのスコアも大幅に向上するとの報告もネット上で散見されます。 特に、PCのパフォーマンスが重要となる動画編集やゲームなど重めのアプリケーションを実行するユーザーに取っては朗報ではないでしょうか。
なお、Windows 10 の詳細な内部仕様について興味がある方には、Windowsの人気解説書のシリーズである「インサイドWindows 第7版」がお勧めです。
また、Windows 11の購入はこちらのパッケージ版 Windows 11 Proがお勧めです。
公開日時:2021年12月24日 11:18:36
最終更新日時:2024年11月17日 18:27:57