第8回:Windows Millennium Edition (Me) が Windows 9x 系の有終の美を飾る
対象プロダクト:Windows Me
Windows Me の概要
2000年9月23日に Windows 9x 系最後の Windows となる、Windows Millennium Edition (以下 Windows Me) がリリースされました。
Windows Me は数ヶ月前にリリースされた Windows 2000 ライクな UI を搭載し、Windows 9x の特徴であった MS-DOS モードを廃し、代わりに Windows 系で初となるシステムの復元機能を搭載した、マルチメディアとヘルプ機能を強化した OS です。
マルチメディア機能としては、Windows ムービーメーカーが搭載されました。
しかし、Windows 9x という、システムリソースが限定的なアーキテクチャであるにも関わらず、メモリを大量に消費する(重い)アプリケーションを動作させるという点については、方向性としては無理があった発想であった事も否めません。
なお、良い点としては、既に廃れていた MS-DOS モードを思い切って削除し、OS の起動時間を短縮した点が挙げられます。
この当時、Microsoft は Windows 2000 を足がかりとし、Windows NT 系をコンシューマ向け OS として定着させたいという意図もあったように思えます。
つまり、Windows 98 まで続いた、MS-DOS モードを削除する事で段階的に Windows NT 系への移行を促そうとしたのでしょう。
なお、Windows Me がリリースされた時点で、既に MS-DOS モードが無くなった事に対する不満は殆ど聞かれませんでした。
Windows Me の位置づけとしては、微妙な面もあり、Windows 98 ユーザーにとってはあえてアップグレードを行うメリットも少なく、どちらかといえば Windows XP までの繋ぎ的な Windows の位置づけと言ってもいいかもしれません。
また、Windows Me についてはそれまですべてのバージョンでリリースされてきた Microsoft の公式解説書であるリソースキットが出なかっただけでなく、Technet ライブラリにも Windows Me に関する情報は少なく、Microsoft 社内でもかなりマイナーな存在だった事が伺えます。
但し上述のように、システムの復元機能や、Windows 2000 で導入されたシステムファイル保護(SFP)(Windows 2000 では Windows File Protection)が搭載されており、一部のユーザー(特にパソコン初心者)にとっては魅力的な機能が多数ありました。
なお、この Windows Me 以降は NEC PC-9800 シリーズをサポートしなくなりました。
システム要件
コンピュータ本体 | Pentium 150 MHz 以上のプロセッサ ※Windows ムービーメーカーを使用する場合には 300 MHz 以上 (デジタルビデオカメラを接続して使用する場合は 400 MHz 以上) |
---|---|
メモリ | 最小 32 MB 以上の RAM ※Windows ムービーメーカーを使用する場合は最小 64 MB 以上の RAM |
ハードディスク | 250 ~ 490 MB の範囲の空き容量 ※Windows 98 からのアップグレードでは 295 MB 以上の空き容量 |
ディスプレイ | VGA 以上の高解像度ディスプレイ モニタ |
ディスク装置 | CD-ROM ドライブまたは DVD-ROM ドライブ |
その他 | Microsoft Mouse、Microsoft IntelliMouse、あるいは互換性のあるポインティング デバイス |
パッケージの中身
こちらは2000年9月23日にリリースされた、期間限定 特別パッケージ版になりますが、背景が青色で、正方形の Windows 色の複数の窓が浮かんでいるようなイメージとなり、デザイン的には Windows 2000 と類似しています。
箱の中身は、インストール CD-ROM と、クイック スタート ガイド、印刷物が数枚と、非常にシンプルです。
Windows 98 のようなファースト ステップ ガイドは含まれていません。
この頃には Windows のインターフェースや機能は既に親しまれたものになっていたため、マニュアルのコストダウンのために、このようなシンプルな内容物となったのかもしれません。
パッケージの裏には、Windows 2000 Professional と同時リリースされた期間限定 特別パッケージ版であるせいか、製品概要以外にも、Windows 2000 Professional についても紹介されています。
このパッケージのリリースから、約1年後(2001年11月16日)には Windows XP がリリースされるため、その下準備を兼ね、少しでも早く、9x 系から NT 系への移行を促すための位置づけのパッケージかもしれません。
Windows Me の新機能
システムファイル保護(SFP)
ファイルの置き換えや、名前の変更など保護対象のシステムファイルを書き換えようとすると、Windows Me はオリジナルファイルをコピーし、データベース化されたカタログファイルを参照し、そのファイルを書き換えても良いかを確認します。
そして問題ないなら、置き換えます。
問題があると判断された場合は、元のオリジナルファイルに復旧し、コピーしたファイルは削除されます。
この処理は特にユーザーへの通知はなく、バックグラウンドで自動的に実行されます。
なお、ドライバは SFP では保護されません。
システムの復元
システムの復元は、Windows により、システムファイルやレジストリが監視され、Windows Update など、システムに変更を加えようとすると自動的に復元ポイントが作成されます。
また、定期的(コンピュータが 10 時間動作するごとに、且つコンピュータが 2 分以上アイドル状態で放置された場合)、および任意に作成する事も可能です。
この復元ポイントは、その時点のシステムファイルやレジストリ情報にロールバックするための情報をシステムドライブの _Restore フォルダ内に作成します。
監視されるファイルの種類は拡張子が .exe、.vxd、.dll、.com、.inf、.sys のファイルとなります。
なお、[マイ ドキュメント] フォルダ、インターネット一時ファイルは監視対象外です。
Windows ムービーメーカー
Windows ムービーメーカーは Windows に DirectShow と Windows Media 技術に基づいた基本的なビデオキャプチャおよび編集機能を提供します。
Windows Media Player 7
Windows Media Player 7 はそれまでの Windows Media Player 6.4 から大幅に機能が強化されたプレーヤーになります。
各コンテンツのデータを集中管理するメディアライブラリ機能や、世界の主要コンテンツプロバイダーが提供するメディアガイド、音楽CDをCD-ROMドライブに挿入するだけで、CDタイトルや曲名、アーティスト名をインターネット上のデータベースから自動的に取得できる機能が搭載されました。
また、スキン機能も備え、プレイヤーの概観を多彩に変更できるようになりました。
また、Windows Mediaファイル形式で音楽を取り込んだ場合、MP3形式の半分のファイルサイズでCD並みの品質での取り込みが可能です。
Internet Explorer 5.5
Internet Explorer 5.5 は、Internet Explorer 5.0/5.01 で発見された不具合とセキュリティ問題の修正、印刷のプレビュー機能、DHTMLの拡張機能が追加されました。
なお、印刷プレビュー機能では、表示中のページを印刷する前に印刷画面の確認、ヘッダーやフッターに文字列を設定することが可能になりました。
また、DHTMLの機能の拡張により、日本語テキストの縦書き表示や色付きスクロールバーの表示などが可能になっています。
WIA(Windows Image Acquisition)
WIA はイメージングアプリケーションとイメージングハードウェア(デジタルカメラやスキャナ等)を仲介する事で、それらが互いに対話することを可能にしています。
また、WIA は以前の TWAIN よりもデバイスドライバの記述を単純化します。
Windows Me から廃止された機能
MS-DOS モード(リアルモード)
Windows Me のアーキテクチャ上の最も大きな変更は、長い歴史のあるリアルモードで動作する MS-DOS モードを廃した事です。
これは具体的には、OS の起動時の IO.SYS による Autoexec.bat や Config.sys ファイルの読み込みの廃止(代わりにグローバル環境変数はレジストリに置かれた)、および command.com の実行が廃止され、IO.SYS から VMM32.VXD が直接実行されるよう、win.com の実行をバイパスする事で、Microsoft は Windows の起動時間が 4 秒から 12 秒短縮したと公表しました。
なお、MS-DOS モード自体は廃されましたが、これまでのバージョンと同様に起動ディスクの作成や、もしシステムの復元を実行した直後に Windows が起動できなくなった時のために、ユーザーがシステム修復ディスク (Emergency Boot Disk) を作成する事で、FD 起動によりシステムを復元できるオプションがあり、MS-DOS モードを廃した事による影響も考慮されています。
公開日時:2012年02月21日 23:18:59